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ドライアイ

ドライアイは、様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患で、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがあります。(2016年ドライアイ研究会)

ドライアイの病型と原因

ドライアイは、涙液減少型と涙液蒸発亢進型の2つに大別されます。

1. 涙液減少型には、シェーグレン症候群と、それ以外の非シェーグレン症候群型にさらに分けられます。

シェーグレン症候群型ドライアイ

涙腺に影響する自己免疫疾患で、唾液、胃、気道など全身の分泌も減少します。
原発性のものと、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、慢性肝胆汁性肝硬変などの疾患に発症する続発性のものがあります。

非シェーグレン症候群型ドライアイ

「抗コリン作用」の薬剤(血圧を下げる薬、向精神薬、抗ヒスタミン薬など)によるもの、スティーブン・ジョンソン症候群(涙腺導管の閉塞により涙液の分泌減少)、角膜知覚低下(三叉神経障害、コンタクトレンズ装用、LASIKなど角膜手術後などで起こる)、涙腺炎、糖尿病、加齢、睡眠不足や不規則な生活、緊張やストレス、運動不足によるものなどがあります。

2. 涙液蒸発亢進型

ドライアイ_涙液蒸発亢進型

涙液が蒸発する原因は、マイボーム腺機能不全(涙の蒸発を防ぐ脂質成分の分泌低下)、瞬目不全(コンタクトレンズ装用、VDT作業時、パーキンソン病など)、閉瞼障害(顔面神経麻痺など)、点眼薬の防腐剤、眼表面疾患、ビタミンA欠乏症、結膜弛緩症、上輪部角結膜炎、ブドウ球菌性眼瞼炎などがあります。
また乾燥した空気、エアコンやファンヒーターの風などの外部環境も影響します。

涙液蒸発亢進型ドライアイについて

ドライアイ患者は日本では、およそ800~2,200万人いると言われています。最近のドライアイの研究では、涙液減少型によるものは2割で、残り8割は涙の量が減っていないことが分かりました。多くのドライアイは涙液蒸発亢進型、すなわち眼の表面が乾きやすくなって起こるのです。

私達は数秒に1回、1日に10,000~20,000回まばたきをしています。涙はこの「まばたき」で運ばれます。パソコン、スマートフォン、運転などに集中するとこのまばたきが減り、涙が蒸発して、眼が乾燥します。コンタクトレンズ装用中や、エアコンなどにより乾燥した部屋にいる時も、涙が蒸発し、眼が乾きます。眼が乾燥すると、角膜(黒目)表面が傷つきやすくなります。

ドライアイの眼症状

1. 眼の不快感:

眼の乾燥感やヒリヒリ感、ゴロゴロするなどの異物感、眼の痛みや重い感じなど。 眼の表面の乾燥や、まばたきにより瞼と涙の膜が破壊された角膜(黒目)の表面がこすれて、痛みを感じる神経が刺激され、眼の刺激感が起こります。角膜(黒目)の表面が傷つくと、さらに症状が悪化します。

2. 視機能異常:

視力検査が正常でも、小さな文字がかすむ、道路標識などがなんとなく見えにくい、まぶしいといった症状のため、本を読む気がしない、運転しづらいなどの日常生活上不便を生じます。もともと眼の表面は滑らかで、ものがくっきり見えます。ドライアイになると、涙の膜が凸凹になるため不正乱視となり、光が正しく眼に入らず、ものが見えにくくなります。眼の表面が傷つくと、さらに見えにくくなります。

3. 眼精疲労(疲れ目):

眼精疲労の原因の約6割がドライアイといわれています。眼の刺激感や見にくさが終日続くと眼が疲れます。

4. 奇異性流涙:

ドライアイなのに流涙が起こることがあります。ドライアイの人は、冷たい風に曝されるなど眼表面の乾燥が刺激となり、涙液の反射性分泌が過剰に起こって、涙の量が増えることがあるのです。

ドライアイ眼の他覚所見

涙が減ると傷つきやすい角膜(黒目)表面が露出し乾燥することで、上皮がはがれ落ちて角膜上皮障害が発生します。強度の顔面神経麻痺による兎眼(瞼が閉じられない状態)の場合、閉瞼障害が続くと角膜穿孔を来すことがあります。関節リウマチに合併したシェーグレン症候群例でも、まれに角膜穿孔を来し角膜移植を要する例があります。

ドライアイの診断基準と検査

ドライアイの診断基準:

BUT(涙液層破壊時間、tear film breakup time)5秒以下かつ、自覚症状(眼不快感、視機能異常など)を有する。(2016年ドライアイ研究会)

BUT検査とは、眼を開いてからまばたきせずに、眼の表面の涙の膜が壊れるまでの時間(涙液層破壊時間)を測定する検査です。涙液の安定性の評価指標で、この時間が5秒以内の場合、ドライアイが疑われます。

さらにフルオレセイン染色で角膜(黒目)の障害の有無を、シルマー試験で涙液の分泌能を調べます。

治療:

ドライアイは、複数の原因が絡み合って発症している場合が多くあります。一人一人、それぞれの病型や病態に基づいた治療を行う必要があります。

1. 点眼治療:

涙を定着させる保湿のためのヒアルロン酸点眼薬、涙成分の水分やムチン分泌を促す点眼薬などで、まずは自覚症状の緩和を目指します。これらの点眼薬は市販の一時的に水分を補充するだけの人工涙液より涙液膜安定性維持効果があります。

2. マイボーム腺機能不全、眼瞼炎などでブドウ球菌由来のリパーゼ、害毒素が関与している場合

抗生剤や低濃度ステロイド剤の点眼の治療を検討し、重症例では内服薬の抗生剤治療を検討する場合があります。

3. 重症のシェーグレン症候群など、涙液分泌が著しく損なわれている場合

涙の流出路を塞ぐ液体コラーゲンやシリコンの涙点プラグ挿入、さらに外科的涙点閉鎖術を検討します。

4. 結膜弛緩症で重症の場合

結膜切除術、結膜逢着術など検討します。

ドライアイのセルフケア

涙液安定性を損なっている因子を究明して、以下の様な対処が必要です。

    ドライアイのセルフケア
  1. マイボーム腺機能不全の場合、眼瞼縁部をまつ毛シャンプーなどで丁寧に洗い、眼瞼縁のマッサージを行う。
  2. コンタクトレンズは12時間以上の長時間装用を避け、レンズは常に清潔な状態を保つ。
  3. パソコンを使用するときは意識的にまばたきを増やし、30分ごと眼を閉じて休める。
  4. 温熱シートで5~10分間、瞼を温める。(涙の脂質が改善すると滑らかで乾きにくい涙になり、マイボーム腺機能不全やパソコン使用時の眼精疲労に有効)
  5. 点眼薬の保存剤(防腐剤)が原因の場合は、防腐剤の含まれない点眼薬に変更する。また涙が少ないと点眼薬が薄まらず、頻回点眼で角膜(黒目)障害を起こし易いので注意が必要。
  6. エアコンの風が直接眼に当たらないようにする。部屋の湿度を50%以上に保つ。
  7. 保湿効果のある保護めがねで眼の乾きを防ぐ。
  8. ビタミンやミネラル、腸内細菌を整える食物繊維などが豊富な、バランスの良い食事を心がける。
  9. 夜更かしを避け、規則正しい生活を心がける。
  10. 緊張やストレスを避け、運動不足を解消する。

涙の役目

涙は眼の表面を守るバリアのような働きをして、以下の機能で眼の表面を守っています。

    涙の役目
  1. 角膜(黒目)に酸素を与える。
  2. 眼の表面を健康に保つ成分を与える。
    ラクトフェリンなどのタンパク質、ナトリウム、カリウムなどのミネラル、紫外線などの害から守る抗酸化のためのビタミン類や酵素、眼の表面の細胞の再生を助ける様々な栄養成分が含まれています。またリゾチームや免疫グロブリン(IgA、IgG)が含まれているので殺菌作用があります。
  3. 眼の表面を滑らかにして視力の質を上げる。
  4. 水分やムチン、脂質で眼の表面を保湿する。
  5. まばたきの摩擦から守る。
  6. ゴミや細菌など眼に害があって不要なものを洗い流す。
  7. 外敵から守る。

コンタクトレンズとドライアイ

コンタクトレンズを装用すると眼の異物感、こすれる感じ、レンズが眼に張り付く感じ、レンズが外れそうになるなどの症状が起きた場合、ドライアイかもしれません。

コンタクトレンズを使用している人は使用していない人の約4倍ドライアイになりやすいと報告されています。また、まばたきの度に、新鮮な涙が運び込まれていますが、コンタクトレンズで角膜(黒目)にフタをした状態になると、涙の交換率はハードコンタクトレンズ装用時で約20%、ソフトコンタクトレンズ装用時で2~3%に減ります。そのため涙に含まれる眼の表面の健康を保つための様々な成分が減ってしまい、角膜障害が起こしやすくなります。

コンタクトレンズを長時間装用していると、角膜(黒目)が刺激を感じにくくなるため、反射性の涙の分泌が減ります。

コンタクトレンズのタイプとドライアイ

コンタクトレンズは眼の表面の涙液の分布を変化させて局所的な涙液の蒸発亢進を招きます。

ソフトコンタクトレンズ

ソフトコンタクトレンズは素材自体が涙を吸収するので、涙が減りやすいレンズです。そしてソフトレンズは、レンズ上にある涙の水分は少量で蒸発し易く、レンズ内とレンズ下の涙も蒸発し易く乾燥しやすい傾向にあります。さらにまばたきが少ないと、特に角膜(黒目)の下方で涙液層が薄くなり、そこからレンズの表面、レンズ内部、レンズ下の水分が蒸発し、傷がつきやすくなります。

ハードコンタクトレンズ

ハードコンタクトレンズを装用していると、レンズのエッジで涙がレンズの下に吸い込まれ、エッジより外側の涙が減り、乾いて、角膜(黒目)の両端に傷がつくことがあります。

コンタクトレンズ使用上の注意

  1. 装用時間や、使用期限を守りましょう。適切な装用時間を守るため、昼はコンタクトレンズ、夜は眼鏡にするなどして、眼鏡を上手に利用しましょう。
  2. 正しいレンズケア(洗浄、消毒、保存)を行い、常に清潔な状態を保ちましょう。
  3. 異常がなくても、眼の定期検診を受けましょう。
  4. 異常を感じたら、すぐレンズの使用を中止して、眼科を受診しましょう。

文責:青葉台駅前眼科

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