網膜静脈閉塞症
網膜静脈閉塞症
網膜静脈閉塞症とは、網膜の静脈に形成された血栓により静脈が閉塞し、その上流の静脈圧が上昇したため破綻性の出血を起こした網膜出血のことです。網膜中心静脈本幹が閉塞すれば網膜中心静脈閉塞症で網膜全体に視神経乳頭を中心に放射状に出血し、網膜中心静脈の分枝が閉塞すれば網膜中心静脈分枝閉塞症で、閉塞部位より扇形に出血します。
症状
視力低下、分枝閉塞症では閉塞部の下流の出血部位に一致した視野障害など。
進行悪化すると以下の疾患で著しく視力が低下します。
- 黄斑浮腫、黄斑変性:
網膜の物を見る中心である黄斑部に浮腫が起きると、中心視力は著しく低下します。浮腫が長期に及ぶと不可逆的な変性を来し、障害された視力は元に戻りません。 - 血管新生緑内障:
主に網膜中心静脈閉塞症の虚血型に発症する失明率の高い、難治性の緑内障です。好発時期は静脈閉塞発症後約3ヶ月です。時機を失することなく、治療を行うことが肝要です。 - 硝子体出血:
中心静脈閉塞の虚血型や分枝閉塞症の広範な毛細血管床閉塞により形成された新生血管が出血すると硝子体に出血が及び、急激に視力が低下します。
検査
視力検査、視野検査、眼底検査、光学的干渉断層検査(OCT;optical coherence tomography)、蛍光眼底造影など (当院では視力検査、視野検査、眼底検査、光学的干渉断層検査が可能です。これらの結果により、さらなる精密検査が必要と判断された場合、大学病院など地域の基幹病院にご紹介致します。)
治療
虚血型ではなく、黄斑浮腫が自然軽快の傾向であれば、薬物療法(抗血小板薬、網膜循環改善剤、抗凝固薬、線溶療法など)で経過観察しますが、虚血型や黄斑浮腫が進行する場合は以下の治療を行います。
- 網膜光凝固:
主に網膜の虚血部位、毛細血管床閉塞部位に行い、黄斑浮腫及び血管新生による新生血管緑内障や硝子体出血に進展するのを防ぎます。 - 抗VEGF(血管内皮増殖因子、vascular endothelial growth factor )薬硝子体内注射:
黄斑浮腫に対して行います。 - ステロイドテノン嚢下注射:
黄斑浮腫で、抗VEGF薬硝子体内注射による効果が不十分な時や、抗VEGF薬が使えない場合に行います。